居心地を追求した、顧客も社員も笑顔になる空間
- 主な事業内容:
- 建築金物・防犯機器の販売・施工・メンテナンス、安心快適商品の企画・販売
- 本社所在地:
- 東京都豊島区
- 創業:
- 1971年
- 従業員数:
- 247人
“安心と快適”の2軸で、セキュリティ機器の販売・補修などを行う日本ロックサービス。同社を訪問してまず驚くのは、社名入りののれんと、その下に置かれたダイヤル式黒電話である。その先へと足を進めると、さらにインパクトがあるのがロビーだ。黒板を前にイスと机が整然と並び、懐かしい小学校の情景に重なる。
「エントランスは一時的な場所に過ぎません。しかし、せっかくきていただいたなら、ホッとしてもらえる空間にしたいと考えました。大型スクリーンで自社PRをする案もありましたが、『温かみ』を重視し、逆にアナログな世界観にしたのです」

(写真左)黒板と机、イスが並ぶロビー。黒板の記載は毎月変更され、4月には桜の花と新人一人ひとりの名前
を書いて、学校の入学式さながらに歓迎する。前方に置かれた“先生の机”は、先代が社長室で愛用していたもの。
(写真右)入口には個人を呼び出す受付タブレットのほか、部署へとつながる黒電話を配置。左手の壁にはめ
込まれた「大谷石」とともに、アナログな温かみを演出している。
そう話すのは、日本ロックサービスの二上直弘社長だ。同社が現在のオフィスを構えたのは2017年。それまでは複数のビルにオフィスが分散し、社員の交流に不足感があったという。そこでコミュニケーション促進を狙い、執務スペースをワンフロアに設置できる現在のビルに移転した。2階を受付と会議室、7階を執務スペースと分け、設計会社には「ほっとする居心地の良い場」になるようリクエスト。そのうえで二上社長自ら提案したことの1つが、ロビーのつくりだ。この空間をきっかけに顧客と話が弾み、アイスブレークの効果も生み出しているという。
社員の声を取り入れ、より心地よい空間づくり
各部屋につけられたユニークな名称も、顧客や社員を和ませる。日本ロックサービスが建築金物問屋として始まっていることにちなみ、会議室は「タングステン」「コバルト」など金属の名前に。

ユニークさと温かみを備える、社員
サービスが詰まったオフィスについ
て、力強く語る二上社長。
一方で社内に存在する和室は、「虎穴」と名づけられた。二上社長が漫画『タイガーマスク』に登場するレスラー養成機関「虎の穴」から、着想を得たという。実は30年ほど前のオフィスにも畳の休憩室があり、好評だったので移転を機に和室をつくったそうだ。縁側と飛び石、和風庭園まであつらえた本格仕様である。
ほかにも応接スペースは「ベルク・カッツェ」、イート・イン・スペースは「だるま食堂」と、ネーミングに遊び心がうかがえる。
仮眠用の「サイレントルーム」や女性専用のパウダールームなど、リフレッシュできる空間も数多く用意されており、みんなが心地良く働けるよう、社員の声にも耳を傾けてつくられているのが特徴的だ。
二上社長が「居心地の良さ」を追求するのは、女性社員との面談がきっかけだった。当時のオフィスは窓が小さくて暗く、その女性社員から「窓がほしい」と要望を受けたという。まさかその一言を契機に、ここまでオフィスが変わることは想像していなかっただろう。
また、総務担当役員が発した「総務の仕事は社員サービス」という言葉にも、深い共感を覚えたという二上社長。「1日の大半を過ごす職場が殺伐としていたら、サービスが良いとはいえない。社員がいかに気持ちよく働けるか、居心地の良さとコミュニケーションの取りやすさを最優先に考えることが、オフィス空間には必要です」と力を込める。

(写真右)旅館や料亭の風情が漂う和室「虎穴」。この部屋自体が自然なアイスブレークとなり、
打ち解けやすくなるそう。コロナ禍以前は、禅寺から講師を招いて社員向けに座禅会も実施していた。
(写真左)喫茶店をイメージした応接スペース「ベルク・カッツェ」は、アニメ『ガッチャマン』
に登場する敵の名前。中性的なキャラクターが「ダイバーシティにマッチする」と命名された。

(写真左)社員の声から生まれた、女性専用のパウダールーム。ロッカーの奥には姿見と、仮眠用のソファが用意してある。
(写真中央)仮眠室である「サイレントルーム」には、3つの個室にソファベッドを用意。日本ロックサービスでは
昼休みのほかに1日1回の「15分休憩」を奨励しており、この時間に利用する社員も多い。
(写真右)イート・イン・スペース「だるま食堂」には、群馬県高崎市出身の社員に買ってきてもらっただるまが並ぶ。
皆で和気あいあいとコミュニケーションを深められるような、大衆食堂をイメージして名づけた。
採用活動ではオフィスツアーをライブ配信し、社長室にも突撃する。学生たちは遊び心満載の社内に興味を示すだけでなく、「ここまで見せてくれるんだ」と手応えは上々だという。
“安心と快適”を顧客だけでなく社員にも提供する、日本ロックサービスらしいオフィスだ。
機関誌そだとう221号記事から転載