軍事用語から経済用語に変わったVUCA。
突如、訪れる社会を揺るがす事態に、
自らで考え、行動しなければならない

東京中小企業投資育成株式会社
代表取締役社長
望月晴文

 

新年あけましておめでとうございます。

戦争とその後の対立の20世紀が冷戦終了とともに終わり、世界が新しい世紀を、グローバリゼーションと情報技術の発展に代表される科学技術の進歩の成果を刈り取る発展の世紀としてスタートしてから20有余年が経過し、いよいよ2023年の新春を迎えます。

新世紀初期の地球規模の課題はかねてからの人口の偏在的増加に伴う、途上国を中心とする貧困問題などは引続く大問題であることに加え、気候変動による地球温暖化問題がより喫緊の現実の課題として認識された状況にありました。
しかしながら、3年前に中国の一地方で発生したコロナという感染症が瞬く間に世界中に広まり、世界を大感染の惨禍に包んでしまいました。この3年間は国の貧富を問わず感染の被害は広まり、病原体はその姿を変えワクチンとの戦いの中でも生き続けています。

世界の経済への打撃は強弱の変化はあるものの、その脅威はいまだ制圧されておりません。世界経済の牽引者であった中国はゼロコロナ政策と称する厳しいロックダウン政策をとり、経済と社会を世界から孤立させ、自らの経済自身も厳しい低迷を強いられています。
おそらくこのコロナ禍は本年の世界経済成長の大きな下押し要因となり続ける要素となることが危惧されます。

加えて、昨年の2月にロシアがウクライナに電撃的な軍事作戦を行い、戦車、ミサイルの攻撃により、大きな惨禍を引き起こしています。前世紀の第一次、第二次世界大戦の記録映画を見るような映像が突然世界に報道されたとき、当事国以外の人々が我と我が目を疑ったシーンであったと思います。もちろん地域紛争はこれまでも皆無であった訳ではありません。しかし冷戦終結以降、先進国間で戦争抑止力がこんなに簡単に破れ、再び西側諸国が結束して制裁を加えなければならない事態が発現するとは、通常の専門家の予測をはるかに超えた事態であると思います。

核兵器により対立していた冷戦時代が終了した1990年ごろに軍事用語でVUCAという言葉がありました。確定した事実がなく軍事的に不透明な時代を称していた言葉のようでありました。それが2010年ごろに経済においての不透明な状況を予測する言葉として使われ始めました。

変化し(Volatility)、不確実で(Uncertainty)、複雑な(Complexity)かつ曖昧な(Ambiguity)時代になるという意味であります。

先の二つの大きな事象は何れも突然で、情況変化を予測することが困難で、考えるべき要素が多様で、対応策も決定的なものがない課題であります。しかしながら、この二つの事象は単に世界のリーダー、国のリーダーに任せておけばいい問題ではありません。もちろん、大きな枠組みはおそらく政治的リーダーのかじ取りに任せるしかありません。他方、この問題が完全解決するまでの間、社会が大きな影響を受け続けている以上、企業や人々は自ら自分自身にかかってくる被害を僅少化すべく対応していかなければなりません。

変転極まりない世界で、求められる姿勢とは

コロナや戦争の直接被害だけではなく、そのもたらす経済的被害は大変大きなものがあります。

エネルギーや資源、あるいは工業製品などのサプライチェーンも相当な影響を受けています。
現状はもとより、将来この問題がどのような展開をしていくかを予測しながら対応策を準備実行するということが不可欠です。

グローバル化ということは世界が小さくなることでもあります。1918年のスペイン風邪が世界に流行拡大したスピードと広がりにくらべ、今回のコロナははるかに早く広く感染してきたようであります。ロシアのウクライナ侵攻は東ヨーロッパにおける地域紛争にとどまらず、世界のエネルギー価格の急騰、食糧需給のひっ迫を瞬時に引き起こしました。

2023年の新春を迎えるにあたり、我々の住んでいる世界はこのように変転極まりのない不確実の世界なのだということにもう一度思いを致すべきでしょう。そして、社会、企業、家庭の運営にあたってもこの不確実の世界の中で、能うる限りの情報収集、分析能力を磨き、必要と思う行動を迅速にとるという姿勢こそ求められていると感じております。

私たち東京中小企業投資育成会社は、そういう努力を行う投資先の皆様にとって真に役に立つ存在でありたいと願っております。
弊社は本年2023年11月に創立60周年を迎えることになります。これまでご支援とご指導をいただきました皆様に厚くお礼申し上げます。

皆様方にとって、本年が実り多き年になりますことを心からお祈り申し上げます。

 

機関誌そだとう213号記事から転載

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