支援事例
経営のド素人でも、一人前の“後継者”になれる!

ダンレックス株式会社

八木橋拓也社長

主な事業内容: 保安用品の企画、設計、製造、販売
本社所在地:東京都中央区
資本金:2000万円
設立:1979年
従業員:15名

 

中小企業が事業承継に苦慮する要因の一つが少子化だ。オーナー経営者に後を継ぐ親族、特に子どもがいないケースが増えているのだ。
そうした中、娘の「お婿さん」に会社を任せることも、打開する方法の一つである。オーナー経営者としては、親族外承継が難しい場合、娘婿の意向次第ではあるが、社長候補として“選ぶ”こともできる。

とはいえ問題がないわけではない。娘婿の場合、経営者の子息子女と違って、必ずしも「経営者になる心構え」が子どものときからあるわけではない。会社員や公務員の家庭に育ち、「経営者の苦労や振る舞い方を知らない」といったケースも少なくない。2019年に就任したダンレックスの八木橋拓也社長も、そんな一人だった。

ダンレックスは、保安灯を中心とした保安用品メーカーで、八木橋社長の妻の祖父が1979年に設立した。
「妻の実家は、創業者の代から娘しかおらず、常に後継ぎが課題だったそうです。私が入社したときは義母がオーナーで、プロパーで叩き上げのエンジニアが社長でした。そんなわけで、結婚以前から、『会社を継いでもらえたらうれしい』と相談を受けていたんですよ」と、八木橋社長は明かす。

座学とグループワークで経営のイロハを体得

同社の主力商品(上)と、工事現場での
設営風景(下)。センサーで同期し、一斉に発光する。

八木橋社長は、実家が栃木県の兼業農家で、父は農協職員。「親族や地域には、農家のような自営業の人はいても、会社経営者はいませんでした」と振り返る。理工系の大学院を修了後、ポンプやボイラーで知られる大手機械メーカーに就職。営業職を4年務めた後、結婚を機にダンレックスに入社した。

入社後は営業部門に配属されるが、わずか半年後、「投資育成が開催している次世代ビジネススクール(BS)に参加するように」と、義母と社長から申し渡される。
「経営の素人だったので不安ばかりでしたが、一方で期待もありました。中小企業の経営者候補たちと、身近に接する機会ができるからです」

BS参加は29歳のとき。全10回のセミナーを受講して卒業となる。
「参加者は20名ほど。中小企業の2代目、3代目が多い中、オーナー家族の出身ではない方もいました。ただし、私はその中で最年少でしたね」

セミナーでは、経営戦略やマーケティング、財務、組織づくりなど、経営者として身につけておくべき知識や理論を学ぶ。「実践的な内容を体系的に学べるので、今でも役立っています」と、八木橋社長もその効果を語る。

また、単なる一方通行の座学ではなく、ロールプレイングなども取り入れたゼミナール方式も特徴だ。受講者がアイデアを出し合ったりするので、「経営者の先輩たちの物事の見方、考え方を知ることができて、とてもためになりました」と八木橋社長。とりわけ八木橋社長は、「若い年代だったので知らないのは当たり前と開き直り、何でも臆せずに、講師の先生や同期生など周りの人たちに質問できたのが最大のメリットでした」と言い切る。

同時に、セミナー後の宴会の幹事も務めるなど、プライベートでもメンバーとの交流を深めた。
「BSの大きな意義の一つが、ほかの経営者との人間関係を構築できることです。子どものときから、後継者として育てられる2世、3世の方々は、意識が断然高いんですね。中でも投育のBSに通う方は、『会社を成長させたい』という向上心が特に旺盛だという印象を受けました。私も大いに刺激を受けましたよ」

BSで築いた人脈から新ビジネスが生まれることも

BSの同期生との交流は卒業後も続いているそうで、「BS卒業生が一同に会するOB会も楽しみにしています」と八木橋社長は話す。

「同期生は、お互いに社長に就任したりしているので、人に言えない経営の悩みなども相談しています。経営者の先輩には、同じような経験をした人も多く、的確なアドバイスをもらうことができます。ほかの経営者の違った視点が、ビジネスのヒントになることもあります。私も就任後、“社長は孤独”と実感できるようになりましたが、経営者としての考え方や価値観を共有でき、何でも腹を割って話せる一生の仲間ができたことが、BSで得た最大の財産かもしれませんね」

例えば、同期生の一人から「保安用品も規格が必要ではないか」と指摘され、自動車のオートライトの国際基準を保安灯の点灯開始照度に独自採用したところ、顧客から好評を博し、売上を大きく伸ばした。被服メーカーの同期生に依頼し、ダンレックス用の「ファッショナブルなオリジナル作業着」を作ってもらったこともある。

鉄は熱いうちに打てというが、「BSを受講するなら、若ければ若いほうがいいですね。経営者に年齢は関係ありません。経営者としての意識にスイッチを切り替えることが何よりも肝心で、それにはBSが最適です」と、八木橋社長は勧める。

 

(左)作業着は、BSの同期生に依頼した同社のオリジナル。機能性とデザイン性を両立している。
(右)2000年に製造業務を中国へ移したが、富山工場はまだまだ稼働中。2022年9月には増設した。

 

機関誌そだとう213号記事から転載

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