支援事例
自己評価の落とし穴。「業績堅調」は本当か?

株式会社ユードム

森 淳一社長

主な事業内容: ソフトウェア設計開発、クラウド導入支援コンサルティング・構築支援、CO2測定システム開発・販売 など
本社所在地:茨城県水戸市
資本金:9,520万円
設立:1976年
従業員:304名(グループ計403名)

 

「まさか、一言集約の意見が一致するとは……」
経営ドック初日を終えて、株式会社ユードムの森淳一社長と経営幹部3人は、予想外の結果に落胆の色を隠せなかった──。

森社長ら経営陣4人は、2022年1月、投資育成経営ドック(経営改善サービス)に参加した。経営ドックは、新たな企業成長の方向性を明示し体質改善の突破口をつくることを目的とし、投資育成が投資先企業の経営陣3~4人と2日間、今後の経営方針について話し合い、アクションプランに落とし込むまでの機会を提供するサービスだ。

ユードムはSI(システムインテグレーター)事業を主力とし、日立製作所(グループ含む)をはじめ、交通、物流、電力など大手から中堅企業までの組込・制御系ソフトなどを開発している。また、財務や生産、顧客管理などの業務系ソフトウェアも開発するほか、近年はGIS(地理情報システム)やモビリティーサービス関連システム(駐車場やレンタカー、カーシェアリングの管理ソフト)が伸びている。

役員の世代交代と組織再編でさらなる飛躍へ

ユードムの22年3月期の売上高(グループ合計)は37億2000万円、前年同期比約6.3%増加。順調な経営状態とみられる中で、なぜ経営ドックに参加したのか。

「会社のさらなる成長に向けて、大規模な組織改編に着手し、2022年度から新体制で臨む計画でした。そこで、私の両脇を固める新任の経営陣の意思統一と中期経営計画作成には、4人で参加できる経営ドックが最適と思ったのです」と、森社長は経緯を説明する。

森社長は創業者の父、2代目社長に続く、3代目として18年に社長に就いた。就任後、それまで8部門で構成されていた主力のシステム開発事業を3事業部制に再編し、世代交代の時期も迫っていたことから各事業部を同世代の経営幹部に任せたいと考えていた。そこで、新たに選任する予定だった経営幹部3人と会社を離れ、今後の経営方針を議論し、4人で目線合わせができればと参加を決意したのだった。

森社長は就任後、8部門のシステム開発
事業を3事業部制に再編。役員の世代交代も視野に、
さらなる飛躍を誓っている。

経営ドックのポイントは、定性・定量両面から自社を客観的に見つめ、いま抱えている問題点の本質をつかみ、自社の原点に立ち返り、成長・発展への戦略づくりをおこなうことにある。
業績はどちらかというと褒められる内容だと思っていた(森社長談)。しかしながら、経営ドックの受講前に提出した決算書に対して、専門家の評価は厳しいものだった。
「生産性・成長率が低く、労働分配率が高いという評価は予想外の指摘で驚きました」と、森社長は振り返る。

経営ドック初日の最後には自社の現状を参加者4人で「一言集約」としてまとめる。森社長らが初日を終えて、自社の現状をまとめた言葉は「自己分析が弱いぬるま湯体質。生産性が低く、成長停滞企業となっている」というもので、4人の意見が一致していた。
「落ち込みましたが、経営者として、もっと付加価値の高い仕事を受託していくべきだと気づかされました。外部の第三者の視点が入ったことで、自社の現状を深く把握し、弱点を客観的にとらえられたのが非常に有意義だった」と森社長は振り返る。

プログラム2日目には、経営課題を踏まえて、経営計画や中期ビジョン、行動計画を議論し作成した。自社には優秀な人材が揃っているだけに、事業領域の拡大などまだまだ取り組めるアクションプランは十分にあると幹部陣で目線を合わせることができた。

売上高50億円を目指し中期経営計画を策定

2日間のプログラムを終えて、森社長らは、経営ドックの成果物をもとに「中期経営計画55チャレンジ(ゴーゴーチャレンジ)」を策定した。これは、創業50周年にあたる5年後の27年に、売上高50億円、営業利益5億円を目指すという計画で、生産性向上に向けた戦略を明確化できた。具体的には、新規取引先の開拓などを盛り込んだほか、自社製品SocketDebuggerシリーズの拡充・拡販も柱とした。同シリーズは、ソケット通信などの開発・試験業務における生産性・業務効率向上を目的として開発された高機能な通信試験支援ツール。競合製品が少なく、さらなる販売拡大が期待される。また、CO2測定器とIoT製品を連動させ、測定データをクラウド上で一元管理できるモニタリングシステムの開発・販売(環境・IoT事業)の拡大に動き始めているほか、商圏拡大に向けたM&A(買収)も視野に入れる。その他、ユードムアリーナのネーミングライツ取得や小学生プログラミング大会への協賛など地域貢献活動にも力を入れている。55チャレンジは全社員に周知し、金融機関や株主にも公表している。

 

(左)同社では小学生プログラミング大会への特別協賛など、CSR活動にも力を入れている。
(右)CO2濃度を測定し、換気の目安を教えてくれる「CO2 Detector」。学校やオフィスでの需要を見込む。

 

「経営ドックに参加し、経営陣が一枚岩になれたのは非常に大きいですね。トップ4人で導き出した目標なので責任も共有している。中計達成に向け、とても頼もしく感じています」と森社長は、3人の役員とともに前を見据える。

 

機関誌そだとう212号記事から転載

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