支援事例
新卒社員はなぜ辞めたか?本音を知り、社内改善へ

株式会社イノウエ

井上 毅社長

井上 毅社長

本社所在地   :神奈川県相模原市
主な事業内容  :ゴムひも・手芸用組みひも製造販売
創 業     :1928年
従業員     :37名

初めて採用した新卒社員がなぜ辞めてしまったのか──。そんな想いから投資育成「社員職場意識調査サービス」を利用したのは、株式会社イノウエの井上毅社長だ。

同社は1928年創業で、ヘアゴムの製造販売を軸に事業を展開、神奈川県モデル工場に指定されるなど、実績・知名度ともに高い優良企業だ。

社内環境に問題はないか?その手がかりをつかむために

社員のみなさんと記念撮影

2018年に創業90周年を迎えた。社員のみなさんと記念撮影。

井上社長は7年ほど前に父親から社長を引き継いだ。ちょうど同じ時期に初めての新卒を採用したが、5年ほど勤務して辞めてしまったという。

「辞める社員は、本音で理由は教えてくれません。何か会社に問題があるのではないか。だとすれば、会社をどう変えればいいのか、手がかりがつかめればと思い、申し込みました」

新卒社員が辞めた当時は、新しいことにチャレンジしようとしている時期でもあったが、会社の業績が良かったために、若手のフレッシュなパワーを使って新たな事業の柱を考えさせるよりも、既存事業の拡大を優先してしまった。また、家族や子どもがいる社員のことを思い、会社を休みやすくした結果、反対に若手が休みにくくなり、休暇に関しての不満が生まれていたのかもしれない。社員とのコミュニケーションの問題を含め、井上社長は実状を把握したかったのだ。

「社員職場意識調査サービス」は、投資育成が13の視点、63問の基本設問によって社員に匿名のWEBアンケートを実施して、それを集計した上で課題を明確化し、経営者に対して職場改善につながるサポートをしていくサービスだ。もちろん、実施料金はリーズナブルである。

「結果を見て思ったのは、予想したよりも、社員が会社のことをよく考えてくれているということでした。また、危惧していた、社内のコミュニケーションにも大きな問題はないことがわかり、ホッと胸をなでおろしました」

投資育成の調査結果によると、「業務マニュアルができていない」「人員が少ない」「人事評価制度がよくわからない」といった指摘はあったものの、それ以外の部分では、おおむね高評価だったのだ。

本社社屋

自然豊かな神奈川県相模原市に位置する本社社屋。

とくに安心したのは、井上社長が大事にする会社のスローガン、「楽して稼ごう」が社員に浸透していたことだ。井上社長は、常に社員の立場でメッセージを伝えるように心掛けている。

たとえば、業務効率化や生産性向上を目標に掲げる企業は多いが、それは“会社目線”の目標でしかない。“社員目線”で言い換えれば、「楽して稼ごう」となるわけだ。

苦労が多くても、その分、多くのお金をお客様から受け取れるわけではない。誰にでも平等に与えられた1日24時間を、いかに効率よく使って稼ぐかが大事であるということである。

社員職場意識調査サービスで得られたデータは、会社をより良くしていくために貴重なものである。井上社長は、それらを参考に改善を進めた。

業務システムの導入と評価制度の改革に着手

ヘアゴムリング

業界トップクラスの多彩な色や種類を誇る
ヘアゴムリング。

まず、「業務マニュアルができていない」という指摘を払拭するために、業務システムの導入を決めた。これまでは、エクセルを自由に使いこなせる人とそうでない人など、社員のスキルの違いが業務効率に影響を及ぼしていた。そこで、業務システムを導入し、誰でも同じスキルで仕事ができる環境をつくることにしたのだ。業務システムを導入するには、作業フローなど明確にしなければならないので、自然とマニュアルができ上がる。また、相談をしながら進めなければならないので、社員のコミュニケーションが増える副次的な効果も表れたという。

ただ、当初は一部の女性社員が業務システムの導入に難色を示した。新たなことを覚えなければならないからだ。

「これは、仕事中に“夕食を何にしようかな”って考えていても、絶対にミスが起きないように導入するんだよ」と、ここでも井上社長は“社員目線”を大切にして、説得していった。

また、指摘のあった人事評価制度についても、新たなものを検討している。先代社長の時代は社員数も少なかったので、全員を見渡して評価することが可能だった。

入念な検査・検尺

完成したゴムひもを丁寧に枠に巻きながら、入念に検査・検尺する。

しかし、井上社長が引き継いでからは、社員数も大幅に増えて、把握も容易ではなくなった。そこで、中間管理職が部下を評価する仕組みに変えたが、社員にしてみれば、「どんな基準でどう評価されているか」がわからず、不満に思っていたわけだ。

「そこで、評価の結果を社員に知らせるようにしたらどうかと考えています。ただ、なかなか難しいですね」

高い評価を受けた社員は喜ぶだろうが、辛口の評価を受けた社員は反発する可能性がある。それでは評価をした中間管理職との関係がぎくしゃくしかねない。結論は出ていないが、社員にもわかりやすい評価の方法を模索中だ。

調査結果から課題とわかった人事評価制度でも、井上社長による“社員目線”の改革がさらに進みそうである。

機関誌そだとう204号記事から転載

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